屋上に沢田君の影が見えると行ってしまうのはもう癖なのかもしれない。 どんよりとした心のまま屋上への階段を上がると、沢田君があたしを見て、それから驚いたように目を見開いた。 「先輩・・・」 どうしたんですか、と沢田君が言った。 「な、にが・・・?」 「・・・泣きそうだから」 そう言われて、思わずじわっと目涙が浮かんできた。 「う、うぅう・・・!」 ぐっと唇をかんで堪えようとしたけど、涙はあとからあとから出てきて、ついに頬に落ちた。 沢田君はおろおろとあたしを見ていて、でも涙は止まらない。 駄目だ、あたし沢田君には相談できる先輩でいたのに。 沢田君だって不安な心をもってるんだから、頼られるようにしようって思ってたのに。 今じゃすれ違ったって両思いな二人が悔しくて。 言ってやろうかと思った。 ハルちゃんが沢田君のことを好きなのは本当だよ、本気だよ。 死ぬ気の沢田君じゃなくたって、駄目でも沢田君が好きだって言ってたこと。 優しいところが大好きなんだって言ってたこと。 どの沢田君も好きなんだって誇らしげに恋する表情で笑ってたこと。 本当はハルちゃんが沢田君に伝えなくちゃいけないことだけど、でも言ってしまおうかと思った。 だから不安に思うことなんてないんだから、あたしと違って。って。 ただの八つ当たり。 「っ、う・・・・・ごめ、んね、沢田君」 今日は相談には乗れないよってういと、沢田君はそんなこといいですよって言った。 頭の中に恭弥さんの言葉がグルグル回ってて、どんどん底なし沼に沈んでるみたいだった。 苦しいよ、痛いよ。 涙を流してるはずなのに、その苦しみも痛いも胸の中にとどまったままで、さらに増えていって。 涙が零れるたびに苦しくて痛い。 「っごめ、ごめんね・・・っ!すぐ止めるから」 「・・・先輩」 凄く不安そうな顔で沢田君があたしを見ていて、急いで擦ろうとした。 「何してるの?」 ガチャリと音がして、見るとそこにはギロリと沢田君を睨んだ恭弥さんが居た。 その後ろからはディーノさんとその部下のロマーリオさん。 拭いてなかった涙がポタリと落ちて、あたしは急いでごしごし拭った。 「ツナ?それに、何で泣いてるんだ、」 「あっ・・・」 言い訳しようとして口を開いたけど、恭弥さんが視界に入った瞬間に何もいえなくて。 目の周りが熱くてポロポロ涙が溢れた。 先輩、と沢田君の不安そうな声が聞こえたけど、あたしはもう一言も何も言えなくなってた。 じろりと、恭弥さんがあたしを見た。 |