「六道、笑いをありがとう」
とりあえず礼を言っておいた。

「は?」
やっぱり予想通り六道は変な顔をしたけど。
ポンポンと肩を叩いておく。

「いやー、まさかあんたが笑い要員だとは思って無かったよ、うんうん。あたしの人生に彩りをくれてありがとう」
うんうん頷きながら言うと、六道はさらに分からないという顔をした。

大丈夫、あたしも言ってる意味わかんない!


「いいね、六道の声って例えるなら麻薬だね!」
「何でそんな危険なものになるんですか」
わけがわかりません、という骸にあたしも頷いた。

第一声が麻薬とかありえないし、本当自分でも発言の意味がわかんない。
だけど、そんな感じがするのだ。


「いーなーいーなー、六道声頂戴。つーか声帯頂戴」
「怖い発言しないでよ!」
綱吉の机にドテーっと上半身を凭れさせながら言うと、綱吉が叫んだ。

うん、たしかにちょっと怖かったかもしんない。
「えー?じゃあ喉頂戴」
「さらに怖いからっ!!あと首くれとかそんなのも駄目だからね!」

ちくしょう、先回りされちゃったよ。
こっそりちぇーといってると、チャイムが鳴った。




本当に、六道の声は麻薬だと思う。
教室の中は先生の声と、ひそひそ話の声と、外の自然の音で満ちた。

横にかけてある鞄をじっと見る。


「(声、聴きたい)」


あの低いけど低すぎない声がいいと思う。
ちょっと特徴的なのも中々無い感じですごくいいと思う。

あたしはすごく、六道骸の声がすきなんだなぁ・・・。


あとは別にどうでもいいけど。
髪も綺麗だし、肌も綺麗だし、目も綺麗だし、全部全部格好いくて綺麗だと思うけど、何だかツクリモノみたいに見える。


綱吉といるときは人間みたいだけど。
あとは全部なんだか人形みたいだ。

女の子に上目遣いで話し掛けられてるときも、先生に話し掛けられてるときも。
全部全部ツクリモノの表情みたいだ。


その中で、声だけが。



「(声聴きたいなぁ・・・)」
さっさと、一日が終わればいいのに。

本物だけを掴まえたウォークマンを聞きたくて、あたしは時計ばっかり見つづけた。





本物を閉じ込めた箱



( そうしてあたしは声が聞こえなくなったときにそれを耳にあてた )