そんな電撃結婚をした翌日。 「―――うわぁ」 「・・・」 そのストーカーから手紙が届きました―――私宛に。 「す、すごいねぇリョーマくん。なんだか、まるで悪口の一覧表見てる気分だよ」 「まあ傷つかれるよりはマシだけど、そこまで呑気なのもどうなの」 広げた手紙は計20枚。全部私に対しての悪口が真っ赤なペンですみからすみまで書いてある。 よくこんなに書けることあるなぁ・・・あ、また同じこと書いてある。 ええっと、中身を要約すると、つまりは―――彼は私と結婚するのに彼を脅して結婚したんでしょう、最低アバズレ女。あんたみたいな極悪人から私が彼を救ってみせるわ―――みたいな、内容だ。 よくこれで20枚も書けるなあって感心しちゃう私っておかしいんだろうか。 「・・・ほんとに、平気そうな顔してるよね、」 「え?うん、だって私にも何かくるって分かってたし・・・リョーマくんも分かってたでしょ?」 「ま、ね。流石にそんなに簡単に諦めてくれるとは思ってなかったけど・・・ここまでとは思ってなかったのは俺の落ち度だね」 普段リョーマくんに送られてくるのは可愛い便箋に入った結婚届けだけらしい。 今回使われてるのは真っ白な便箋で、中も真っ白な奴に横線が引いてあるだけの簡素なレターセットだ。・・・確かにファンシーなやつで送られても怖さ半減って感じなんだろうけど。 「そう?だってこっちに標的変わるだろーなって思ってたし。分かってて私も結婚したんだから、半々だよ、きっと」 ほら、夫婦なんだし、こう責任も半分半分っていうか! そう思ってリョーマくんを見上げると、リョーマくんから返事がなかった。 あれ、私なんか外した? 友達にもいっつも論点ずれてるって言われちゃうし、作文でも先生に結論で論点がずれていますとかって怒られることもしばしばある気が・・・あれ、本当に外したかも、私。 「リョーマく、わっ!」 不安になってリョーマくんの名前を呼ぼうとしたら、ぽんっとリョーマくんの手が頭の上に乗った。 あ、あれ、これってひょっとして所謂なでなでっていうやつじゃ・・・!! 「りょ、りょりょ、リョーマくん!?」 「あの時・・・選んだのは適当だったんだけど」 あの時?選んだ・・・って、ひょっとしてこの間の法事のときのこと? て、適当・・・い、いやそりゃそうなんだろうけど・・・て、適当か・・・。 「でも、を選んで当たりだね」 「あ、あたり・・・?」 え?あれ、私論点外しちゃったんじゃなかったっけ? それがなんであたり?えっと、っていうか、なんであたり? あれから数分くらいなでなでが続いて・・・どうやら、リョーマくんは私の頭が気に行ったらしい。丁度いい高さってなんだろ・・・漸くばくばく言ってた心臓も落ち着いてきた。 「で、えーっとこの手紙はどうしたらいいかな」 「本音を言えば捨てたいところだけどね。証拠にもなるし取っておいたほうがいいらしいんだって」 「そうなんだ。じゃあ、分かるように棚の中に入れておくね」 こういうのってビニール袋で保存しておいたほうがいいのかな。指紋とか消えちゃったらいけないし。 台所にビニール袋があったっけ・・・。 「」 「リョーマくん?」 ビニール袋を取りに行こうとしたら、リョーマくんに腕を掴まれた。 それから反対の手で頭を撫でられる。 「身勝手に巻き込んで本当にごめん。でも、何かあったら俺が絶対に守るから」 じんわりと、言葉が心にしみるっていうのはこういうことなんだなって思った。 リョーマくんがストーカー撃退のために結婚してほしいって言ったのを一にも二にもなく受け入れたのは、本当はリョーマくんが好きだからっていう下心があるからなんだけど。 それよりも何よりも、リョーマくんを助けたいっていうのが一番で。 「うん。お願いします」 でも流石にストーカーは怖いので、接近したら全力で逃げようと思います。 |