「おー!新居じゃん、新居!」
「こら!英二!勝手にドアを開けちゃ駄目だろう!?」
がちゃがちゃと至るところのドアを開けようとする菊丸さんに、大石さんがまるで・・・その、お母さんみたいな感じで突っ込む。
「別にいいっすよ。・・・相談は大石センパイと不二センパイと部長さえいればいいんで」
「にゃんだよその言い方ぁ!」
リョーマくんの言葉に菊丸さんは扉を開けるのをやめてこっちに来た。
・・・怒るより効果あるかも・・・。




「―――越前、これ・・・」

リョーマくんが出した今まで送られてきた結婚届けと、私宛の手紙とか、写真とかを取り出して並べたのを見て、手塚さん達の顔色が変わる。
主に非常に攻撃性の高い私への手紙とかを見て。
「・・・これは、越前のストーカーかなにかってとこかな。・・・ああ、成程。それでちゃんと結婚して諦めさせようとしたけど、攻撃性が高くなったから僕たちに相談したってことか」
「っす」
「・・・そ、そこまで・・・」
並べただけで分かっちゃうってなんか凄いなぁ・・・。
「越前、これは警察には・・・」
「まだっす。こっちが結婚して諦めてくれるんならとは思ってたんっすっけど・・・」
「むしろ凶暴化してる、って感じだね・・・。越前、これは早くに警察に届けておいた方がいいよ。これだけ攻撃的になってるってことは、いつ梓ちゃんに何かあってもおかしくないしね。相手の身元も分かってることだし」
「こんだけ身元もわかってんだし、早く届けた方がいいんじゃにゃいの?」
「明日にでも届けにいくっす」

ついに警察ごとになっちゃうんだな。
普段警察にお世話になるようなことって当然だけどもしてないから、本当に実感わかないっていうか・・・。
実害が手紙とか写真くらいだからなのかな・・・。
いや、こんな気持ちじゃいけないとは思うんだけど・・・でも、なんていうかこう、現実味がない感じがするんだよね。



「・・・あ」

?何?」
「え、あ、ううん!な、なんでもない・・・」

そういえば・・・よく考えたら、結婚も終わっちゃうんだよね・・・。
いや、勿論ストーカーには掴まってもらった方がいいけど、でも結婚生活が終わると・・・もう、滅多に合うことなんてなくなるだろうし。
そりゃ、前よりもしっかりとは覚えておいてくれるだろうけど・・・さ、流石に忘れられたりとかはしないだろうけど・・・前と同じように、1年に1回あえるか会えないかみたいになってくるのかな。
・・・今度は、リョーマくんはちゃんと好きな人と結婚して。

・・・うわぁ、想像するだけでへこんできた。



「・・・ちゃん」
「は、はい?不二さん?」
ちょいちょい、と手招きをする不二さん。
な、なんか凄く嫌な予感がするのは私だけなのかな・・・。
そういえば、テニス部の人たちって色々通称があるんだっけ・・・不二さんってなんだったっけな・・・なんか、こう、不穏な感じの・・・。

「あと少しだけど、頑張ってね?」
「ふ・・・不二さん・・・?」
え、あれ?なんですかその笑顔・・・え・・・。
しかもリョーマくんをちらっと見て・・・。・・・・・・え。


―――ああ、そうだ・・・魔王様、だっけ・・・。





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