うーん・・・暇だ。 のっけから何言ってんだって感じだけど、暇なんだからしょうがない。 リョーマくんは手紙とか写真とか持って警察に行っちゃったし、私は今日は部屋の掃除とかするためにお留守番だし。 ・・・本当は、そのまま警察に行ったら、その足で離婚をしに行こうとか言われたりするのが嫌だからなんだけど。 「まあ、それも時間の問題と言えば時間の問題なんだけど」 リョーマくんが帰ってきたら、多分離婚届を出しに行くことになるんだろうし。 地味な時間稼ぎって言われたら、それまで、 ――――――。 「・・・あれ?今、なんか・・・がちゃん、って」 窓が割れるような音が、したような・・・。 しかも、なんかこれ近いっていうか・・・この、部屋の窓、だよね・・・?下の階とか、お隣の階の音よりも近いような気が。 「―――やっと、この時が来たわ」 「・・・え」 ばん、っと音がしてリビングの扉が開いたと思った瞬間・・・そこに立っていたのは、明らかに成人してそうな女の人が一人。 しかも・・・え、あれって・・・金槌? 「え、えぇえ!?こ、こういうのって油断して一人で外に出た瞬間に襲いに来るとか、そういうセオリーじゃないんですか!?」 窓ガラス割って侵入とか、何それ大胆にもほどがあるっていうか、どうやって入ってきたのこの人!? 屋上から降りるのも下からも中途半端なこの階で・・・!? って、方法じゃなくて、それよりも今の状況の方が・・・。 「あ、あの、落ち着いて・・・こ、こんなことしたって、何も」 「あんたみたいなチンケな女がどうやってリョーマに取り入ったのかは知らないけど、わたしは騙されないわ!」 「え、いや、ち、チンケなのは正しいし、取り入るとかじゃなくて、」 「あの人を救えるのはわたしだけ・・・あの人を幸せにできるのもわたしだけ・・・。本当は彼だってわたしを愛してくれているのに、あんたみたいな小汚い女に騙されて・・・目を覚まさせてあげなくちゃ・・・」 う、うわぁ・・・話通じないんですけど、この人。 いや、話通じてたらストーカーなんてしてないんだろうけども! ・・・というか、本当にさっきから・・・。 「リョーマが可哀想だわ、こんな女に取りつかれて・・・。彼は、私がものなのに・・・。私だけが、あの人を本当に幸せにできるのに・・・」 ―――なんだ、それ。 「ふ・・・」 「・・・何?」 「ふざけんな、ボケババア!!」 「―――はっ!?」 何それ、その言い方、その言葉、その内容! さっきから聞いてたら、凄い身勝手なことばっかり! 「リョーマくんが取り入られたとか、リョーマくんはそんな弱い人じゃないし!そんなことも知らないの!?それに、救えるのが自分だけとか、幸せにできるが自分だけとか、本当の本当に自分を救えたり幸せにできるのはね、本人以外有り得ないんだよ!ばっかじゃないの!?」 リョーマくんはリョーマくんのものだし、取りつかれるとか、リョーマくんはそんな女に騙されるような馬鹿じゃないし。 結局、人が与える幸せなんて、一時のものでしかないんだから。 「リョーマくんは、自分で幸せを掴むために、あんたなんか選ばないんだから!この自己中思い込み勘違いばばあ!」 「っ―――!」 あーすっきりした。 ・・・あれ? 「なんですってっ、このくそがきがっ!」 「ひっ―――!!」 その女の人が持ってた金槌を思いっきり振りあげる。 や、やばい・・・やばいやばいやばい! 言ったことは後悔してないけど、この相手を逆なでする言い方は何とかできなかったの私ぃいい!! へ、平和的な解決を!なんて言っても今更遅いですよねっ!わかりますっ! 「あんたが、あんたさえいなくなればっ!」 「やっ・・・!」 怖い・・・怖い、怖い・・・! 誰か、助けて!誰か―――。 「リョーマくんっ!」 「―――お待たせ、」 |