突然後ろから現れたリョーマくんが・・・手刀っていうのかな?それで首の裏っかわを叩くと、ストーカーの女の人が倒れて、それをリョーマくんが上着か何かで体を縛って、金槌を離れたところに置いて。
それで電話をしてるのをずっと見ていた。


、ごめん。遅くなって」
「リョーマくん?」
あれ、本物のリョーマくん、でいいんだよね。
いや偽物のリョーマくんとかいないんだけど、いないんだけども。
「今警察に電話したから。・・・良かった、間にあって」
「何でリョーマくんがここにいるの?」
「ん、マンションの掲示板に、屋上に不法侵入があったっていうのがあって。それがなんか引っかかってたってわけ」
「掲示板・・・」
やっぱり屋上からなんだ・・・ろ、ロッククライミングっていうんだろうか。
よくわかんないけど。

「・・・まあ、流石に窓を割って入ってくるとは思ってもみなかったけど」
「う、うん。音がしてびっくりしてたら、この人が突然入ってきて、それで、えっと」
何て、説明したらいいんだろう。
説明しなきゃって思うのに、頭の中が真っ白で上手く動いてくれない。
説明を、説明を、しなきゃ。


「・・・本当に、遅くなってごめん」
ふわり、と最近漸くドキドキせずに慣れるようになった香りがする。
リョーマくんの、香りで。
視界に一杯に広がるのは、リョーマくんが来てた紺色のシャツ。
背中にも暖かい感触があって、頭を何度も掌が往復する。


リョーマくんの、腕の中だ。


「りょー、ま・・・くん」
一気に、膝の力が抜けたのをリョーマくんが支えてくれた。
、」
「大丈夫。もう、大丈夫だよ」
ちょっと涙が出てきて、申し訳ないけどリョーマくんの胸に顔を押し付けた。
さっき、膝が崩れてしゃがみ込みそうになった時に反射的にリョーマくんに抱きついてたから、手を離すと座っちゃいそうだったし。
うん、でも大丈夫・・・大丈夫だ。
だって、
「リョーマくんが来てくれたから・・・約束通り、守ってくれたから、平気」
流石に、窓から突然入ってこられたりとか、金槌で殴られそうになったりとか、色々心臓が口から飛び出そうになったりもしたけど、でもあれだけ言い返せたのも、リョーマくんが来てくれるからだ。
だって、リョーマくんが守ってくれるって言ってくれたから、だから大丈夫だって思って。
「・・・そっか」
「うん」

好きな人が守ってくれるって言っただけで、こんなにも安心できるものなんだ・・・。
こういう場合、私がリョーマくんを好きすぎるってことになるのかな・・・うわぁ、ちょっと恥ずかしい。


恥ずかしさとか、さっきまでの怖さとか、兎に角色んなものが渦巻いて、私は警察が来るまでの間リョーマくんに抱きついていた。
リョーマくんも、ずっと抱きしめてくれていた。





言葉の魔法



( たった一言で、溢れるほどの勇気になるよ )