「ひひひひ、日吉!とりあえず、あの、襲うとか食べるとか、ああもう、食べちゃぐふぁ!!」

とうとう念願の氷帝マネージャーになって、せっかく日吉に飛びつこうとしたのに(それが目的だったし)。
それよりも、背中、が。


「ジロちゃん先輩、重いっ!つーか重いっ!!」

「んー・・・はさぁ、抱きごこちがいいんだよねー、肉多くて」
「太っててすみませんでしたねぇ!!」
ここで普通の女の子だったら、お気に入りとかそんな発想が浮かぶんだろうけど、そうじゃない。

何せ、この先輩・・・人の腹触りながらいいやがったっ!!


「ジロちゃん先輩いい加減にしないと訴えますよ!セクハラセクハラー!!」
「えー?言うほどないくせにー」

・・・待て、いつみた・・・。
兎に角侮れないジロちゃん先輩は振り落としておくとして、それよりも日吉っ――!!


「なぁ、日吉。ラリーしよう!」
「ああ」
そこには日吉を誘う鳳君の姿が。

「ちょ、鳳あんた何してんのよっ!態々誰がこんな好きでもない男どものためにジャージ洗ったりスコアつけたりするような仕事をしにきてると思ってんだ、あーん!?」
「ちょ、、さんっ!跡部部長の口調移って・・・っていうか、息、が・・・!ぐふっ!」
どさりと落ちた体は放り投げておく。

その間に日吉は別の部員たちと試合してるし・・・(ちくしょうっ、あと一歩遅かった!)。


「ありゃりゃー、残念やったなぁ。つーかちゃん日吉が目的やったんかい」

「あったりまえじゃないですか、忍足先輩!そうじゃなきゃ誰がこの顔はベラボウにいいくせに性格最悪なテニス部のマネージャーなんかになるんですか!折角、折角・・・日吉に球出ししてあげるつもりだったのにぃい!!乙女の夢を奪いやがってぇ!!」



地面に突っ伏してる鳳君の首を持ってグワングワンと揺らした。
日吉にちょっとずつ関わって、彼女じゃなくてもいいから仲良くなりたかったのにー!!


そして、

「あわよくば誰も居ない部室で服引ん剥いて襲うのが目標だったのにー!」

乙女の夢をどうしてくれんのよー!!



「・・・それは乙女の夢じゃねぇだろ・・・」

「――でもいいの!まだ始まったばっかりだもん!」
うふふふふ、最初っから上手く行くことなんて中々ないよね。うん、それはわかってる。


だから、とりあえず。
「下克上とか言われて懐かれてる俺様何様ベ様を再起不能にしてコンクリ詰めにして東京湾に流してくるー」
「いややなーちゃん。跡部家に追われてまうで?」
さり気ない突っ込みが入るけど、そこはちゃんと考えてますからね、忍足先輩!

「そうしてあたしは日吉の所に逃げ込むの!『お願い、貴方に迷惑はかけないから少しだけここにいさせて』『、俺も一緒に逃げる!』そうして二人は手を取り合って逃げ出した・・・!燃えさかる炎の中であたしは言うのよ!『日吉・・・す――」


「はいはいはい、いい加減妄想から戻ってきてね、

「ひぃっ!」
お、おお、悪寒が走った・・・と思ったら、滝先輩だし・・・。
あーさむさむ・・・。この人黒魔術使えるから恐いんだよなー・・・本当に人間なのかな。


「ああ!鳳君が日吉とラリーしてるぅ!!ちくしょー、皆してあたしの恋路を邪魔しやがってぇ!!」
コートで向かい合う二人に向かって叫んだ。




そうして日常が過ぎていったけど、もちろんそれで過ごしていける氷帝テニス部ではなかったのだと、あたしは後に思い知るのである。





僕らのエブリディ!



( とりあえずジロちゃん先輩、あんた人の腹の肉掴んでんじゃないっ!! )